世界のファッション業界に新たな勢力が台頭しています。中国発のファッションECプラットフォーム「SHEIN(シーイン)」が、2024年第3四半期において世界最大のアパレル・ファッションサイトとなりました。
ウェブサイトアクセス数とユーザー数の急増
ウェブサイト分析のSimilarwebによりますと、SHEINは2024年9月および7-9月期にアクセス数が世界最多のファッション関連サイトとなり、7-9月期のトラフィックのシェアは2.68%を占めました。続く2位から4位は、米スポーツ用品大手のナイキ(NIKE)、スウェーデンのファストファッションH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)、スペインのアパレル大手INDITEX(インディテックス)傘下のZARA(ザラ)でした。ユーザー数も大幅に増加しています。データ分析のEarnest Analyticsによりますと、2024年8月にSHEINを利用したユーザーは1月に比べ40%近く増加し、第2位の動画投稿アプリ「TikTok」を抑え、最も成長の速いプラットフォームとなりました。
欧州市場での躍進
SHEINの成長は欧州市場でも顕著です:
- フランス:仏誌LSAによりますと、SHEINは2023年にフランスでの売上高がH&Mを上回り、ZARAに次ぐ第2位のファッションブランドとなりました。2024年には年間売上高でZARAも追い抜く予想がされています。
- ドイツ:SHEINは2023年に第4位のファッションブランドとなり、2024年はさらに順位を上げる可能性が高いです。
欧州EC市場の成長とSHEINの位置づけ
業界団体のECOMMERCE EUROPEなどによるレポート「EUROPEAN E-COMMERCE REPORT 2024」によりますと、欧州38カ国における2024年のEC取引額は前年比8%増加し、9580億ユーロ(約158兆円)に達すると予測されています。この取引急増の背景には、中国の「Temu」やSHEINといった越境ECの存在があります。調査会社Cross-Border Commerce Europeの「TOP 100 Global Marketplaces Report 2024」によりますと、世界の越境ECランキングでTemuが5位、SHEINが8位にランクインしています。
SHEINのビジネスモデル
SHEINの成功は以下の要因によるものと考えられます:
- 多様な商品ラインナップ:レディース、メンズ、キッズ、靴、アクセサリー、インテリア、メイクなど多彩なカテゴリの商品が数十万点以上出品されています。
- 競争力のある価格設定:ライバルのZARAやH&Mに比べて大幅に安い価格設定を実現しています。
- フレキシブルな生産体制:中国の強力なサプライチェーンを活用し、トレンドをキャッチしてから生産までわずか1~2週間という短期間で対応できます。
- 効率的な在庫管理:「小ロット短納期」モデルにより、業界平均30%の在庫率を1桁台にまで抑えています。
- サプライヤーとの良好な関係:業界平均90日の支払周期を、通常30日もしくは2週間、最短1週間に短縮しています。
- 事業者支援:加盟事業者のビジネス拡大や配送センターの整備などを支援し、長期的な競争力を強化しています。
- マーケットプレイス展開:2023年にマーケットプレイスの運営を開始し、自社ブランドとマーケットプレイスの2本柱のビジネスモデルを確立しました。
今後の展開
SHEINは現在、米国で新規株式公開(IPO)の申請を非公開で行っており、早ければ2024年に上場する見通しです。ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーがIPOの主幹事として採用されているとされています。また、2023年8月には米国カジュアル衣料チェーンのフォーエバー21などの運営会社であるスパーク・グループとの戦略提携を発表しており、米国市場でのプレゼンス向上にも注力しています。SHEINの急成長は、グローバルなファッション業界に大きな影響を与えており、今後の展開が注目されています。